2023/09/08
子供の感情欲求【子育て】【生きづらさ】【スキーマ療法】
このブログでは、こころのホームクリニック世田谷の公認心理士から、皆さんにお役に立てる事をお伝えしています。
✔️生きづらさの原因?
今日は子供の感情欲求についてのお話です。
スキーマ療法では今の「生きづらさ」は子どもの時に満たしてもらうべき「感情欲求」が満たられなかったためと仮定しています。
子どもが満たしてももらうべき「感情欲求」を、親や身近な大人が適切に満たしてあげることが大切です。
✔️感情欲求とは
子供は、以下のような欲求を持っていると言われています。
① 他者との安全なアタッチメント
安心したい、愛されたい、理解されたい、守られたい、他者と自分と他者を信頼したい
② 自律性、有能性の感覚
自分に自信を持ちたい、上手にできるようになりたい、しっかりした自分になりたい、物事にチャレンジしたい
③ 正当な欲求と感情を表現する自由
自分の欲求や感情や意志を自由に表現したい、大事にしたい
④ 自発性と遊びの感覚
のびのびと暮らしたい、楽しく遊びたい、人生を楽しみたい
⑤ 現実的な制約と自己制御
ルールを守りみんなと平等でやりたい、自分だけでなく他者の権利も大事にしたい、ある程度、自分自身をコントロールできるようになりたい
✔️感情欲求が満たされない例
Aさんはとても厳しい親に育てられてきました。親は子どものためと思って、厳しいルールを決めていて、それを守らなければ厳しく叱られました。親は厳しく、言い訳は一切聞いてもらえませんでした。Aさんにとっては、③の感情欲求である、「自分の気持ちを表現する」ということができませんでした。自分の気持ちを自由に話すことができないこと、そして受け入れられないことが特に辛かった思い出となっています。
Aさんは一生懸命、親の要望に応えようと努力してきました。
ところが、Aさんは大人になってからも、いつも周りの人に気をつかい、周りの人の評価を気にしてしまい、だんだん苦しくなっていきました。
Bさんは親が病気がちで、小学生のころから、あまりかまってもらえませんでした。また、家庭では社会のルールを教えてもらえませんでした。そのため、①の「愛されたい」、⑤の「自分自身をコントロールしたい」という感情欲求が満たされませんでした。そのため、友人や恋人がいる今でも、「自分は一人ぼっちだ」という孤独感を感じています。また、自分自身の欲求を我慢することが難しく、怒りやすい性格で、怒ってしまった後に自己嫌悪になります。
このように、子供の頃に感情欲求が満たされていないと、自分の感情を過度に我慢するのが当たり前になってしまったり、逆に我慢が難しくなってしまうなど、大人になって、何らかの「生きづらさ」につながる可能性があります。
✔️どうすればいいの?
実際、すべての感情欲求を、100%満たす事は不可能です。
子供自身も、ある程度満たされたところで、満足することを覚えていかなくてはなりません。
欲求不満への耐性をつけていく必要があります。
また、子供の時に、この欲求が満たされなかった場合には、大人になってから自分自身で満たしていく方法を見つけていくことができます。
カウンセリングでは、イメージ技法、認知技法、行動技法を組み合わせながら、自分自身で、感情欲求に気づき、それを満たし、生きづらさが原因で起こっている悪循環から脱する練習をしていきます。
✔️現代の子育ての大変さ
現在の子育て中の30代〜40代のお母様は、自分たちが育ったような子育ては「間違っている」と思っている方が多いようです。
たしかに、昭和や平成初期の子育てや教育現場では、「ルールを守る」ということが特に強調されていたように思います。
それは、感情欲求のうち、⑤「ルールを守りたい」、「自分をコントロールできるようになりたい」ということを満たします。
逆に、現代では①−④にあるような感情欲求を満たすこと、つまり、「子どもの個性を大切にしよう」「子どもを受け入れましょう」という考え方が主流になっていると考えることもできると思います。
実際には、どちらも大切なことであり、愛することと、トレーニング(しつけること)のバランスが大切です。
現代の子育ての困難さの一因は、この子育てや教育についての価値観の変化によるものもあるのかもしれません。
自分自身は子ども時代に、ルールを守ることを厳しくしつけられてきたのに、自分の子どもたちには、子どもたちの主張を尊重しなくてはいけない。そのような中で、混乱し、困難を覚えるのは当然だと思います。
子供の感情欲求の5項目の考え方について、子育て中の方はご自身のお子さんに、そして、生きづらさを抱えている大人の方はご自身のために、ぜひ参考にしていただけたらと願っています。
※引用文献 「スキーマ療法」(金剛出版) ジェフリー・E・ヤング著
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