2022/09/26
自分の考えや辛さを知り、対処する【 認知行動療法 】【セルフモニタリング】
このブログでは、助産師、精神科ナースを経て、公認心理士から、皆さんにお役に立てる事をお伝えできたらと思っています。ご参考になれば幸いです。
今回は【認知行動療法】と【セルフモニタリング】についてお伝えします。
認知行動療法はアーロン・ベック先生が考案した、考えと行動に着目した心理療法です。
うつ病やパニック障害、不安神経症等の精神疾患に対して効果が認められているエビデンス(科学的根拠)のある心理療法です。
認知行動療法は行動と認知(考え)に着目し、さまざまな心のスキルの習得を目指していきます。
✓認知(考え)とは
認知(考え)とは、それぞれの人のものの受け取り方や考え方を指します。
その考えには、それぞれが成長していく中で、自分の中で作られたルールや価値観(スキーマ)が影響します。
✓セルフモニタリングの方法
認知行動療法ではまず、自分の考えに気づくこと、つまり「セルフモニタリング」を練習していきます。
私たちの記憶には、出来事に伴う、その時の気分は覚えているのですが、
自分の考えはあまりにも当たり前の事なので、覚えていないことが多いのです。
①出来事
具体的に、起こったことを描写します。この時に判断や感情は入れず、出来事だけを取り出します。
②感情
一言で言える、悲しみ、不安、怒りなどの感情です。
全くないを0%として、最も高い感情を100%として表現します。
③認知(考え)
その時に頭にぱっと浮かんだ、イメージや考えを捉えて表現します。
④行動
その出来事に対し、どんな行動をとったのか、です。
⑤体の反応
体の反応 (涙が出る、ドキドキする、苦しくなるなど)についても観察します。
ひとつの出来事とその時の自分に起こったことを、このように5つに分けてモニタリングしていきます。
ここで、具体的な例を見ていきましょう。
①出来事
電車に乗っていたら、足を踏まれた。
②感情
怒り70% 悲しみ20%
③認知
痛い、なんて事するの!この人はひどい人だ!
④行動
相手をにらんだ
⑤体の反応
体が熱くなるのを感じた
という感じで、モニタリングします。
✓認知行動療法でのセルフモニタリングの役割
認知はとっさに浮かぶ、自動運転のような考えですので、上の例の場合には、
自分を守るという防衛本能の観点からすると、相手を悪く捉えてしまいやすいと思われます。
そして、足を踏まれたときの感情が、認知によってさらにひどい気分・感情になっていきます。
まずは、このような悪循環に気づく事が第一歩です。
自分の気持ちや考えについては、意外と気づいていなかったり、忘れてしまうことが多いのです。
気づいた後にどうすればいいかと言うと、もう少し状況を違う側面からも見れるよう、情報収集をしていきます。
そうすると別の認知をとらえることができるかもしれません。
例えば上の例でいくと、
③電車が揺れていたから、ふらついたのかもしれない。
体調が悪くて、ふらついたのかもしれない。
その後申し訳なさそうにしていたし、悪気はなかっただろう。
どうでしょうか。
こんなふうに考えると②の怒りが減って、もしかしたら20%くらいになったりするのではないでしょうか。
また、④の行動ですが、上記のように考えが変われば、相手を睨むのではなく、
「大丈夫ですよ」と伝えたら、相手から素直な謝罪を受けていたかもしれません。
私たちの考えによって、行動が影響されたり、感情が影響されていくのです。
また逆もあり、行動や感情が、考えに影響されていくのです。
✓認知行動療法とは
このように、認知行動療法では自分の認知に気づいて、ものごとの見方を広げたり、行動を起こしていきます。
これらをサポートするため、様々な心のスキル(心理技法)があります。
認知行動療法の本も沢山出ていて、ご自身で学ぶこともできます。
お勧めは伊藤絵美先生の書かれている「セルフケアの道具箱」です。
認知行動療法を自分でできると言っても、人は1人で続けていくのは難しいものです。
なぜなら、効果はじんわり出てくるもので、すぐに気持ちが楽になったり、激変するわけではないからです。
でも、確実に心のスキルを身につける事で、良くなったり、ストレスフルな出来事があれば悪くなったりしながら、少しづつ楽になっていきます。
一緒に励ませるお友達やパートナー、誰かと一緒に始めるといいですね。
カウンセラーは認知行動療法のトレーナー、応援団としてサポートしています。
ご自身では対応が難しいと感じる時は、お気軽にカウンセラーまでご相談ください。
こころのホームクリニック世田谷の「お母さんのためのカウンセリング」では、”お母さん”の皆様のご相談をお待ちしております。
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